調理設備を備えた移動販売車両「キッチンカー」が、コロナ禍の中での持ち帰り需要などを追い風に、新しい飲食販売の形として広まっている。府内の自治体も、地域の活性化や災害対策にも一役買うツールとして、熱い視線を送る。(北口節子)
近畿地方の梅雨入りが発表された今月16日、大阪市浪速区の浪速公園の北東入り口に止まったオレンジ色のキッチンカーに、傘を差した市民らが並んだ。注文を受けたスタッフが、持ち帰り用の容器に盛りつけた白米の上に、ツユに浸したアツアツの牛肉を手際よくのせてゆく。
キッチンカーは、関西圏で牛丼チェーン「吉野家」を運営する「関西吉野家」(大阪市中央区)の車両。公園利用者の利便性を高め、周辺の活性化を図ることを目指した浪速区の社会実験の事業者に同社が選ばれ、3月から今月30日まで週3日、キッチンカーで出店している。
同公園はJR難波駅から徒歩5分で、グラウンドや遊具などもあることから、同社のキッチンカー担当者によると、天気が良い日は多くの親子連れらが買い求め、リピーターもいるという。近くの女性(82)は「コロナで出歩くのを控えている中で、密にもならないし、気分転換になる」と笑顔で牛丼を受け取った。
新型コロナウイルスの感染拡大で外食を控えたり、食事をテイクアウトで購入したりする動きの中で、各地でキッチンカーの活用が広がっている。
豊中市も昨年8月、市内の公園や住宅団地などで社会実験を始めた。市内にはテイクアウトに対応する飲食店が少ない地域もあることから、キッチンカー運営を支援する企業「メロウ」(東京都)と市が包括連携協定を結び、実験を行うことにした。
その後も販売場所を順次拡大し、現在は市内の11か所で行っている。市創造改革課は「営業形態を移動販売に転換する事業者も出始めて、キッチンカーという文化が定着してきた印象だ」と語る。実験の終了後も、市管理の公園での本格実施を目指すという。
大阪狭山市でも昨年10月から、市内のため池「狭山池」周辺やニュータウンの公園で社会実験としてキッチンカーが販売を行う。緊急事態宣言中は中止しているが、公園の利活用の手段として検討する方針だ。
一方、大東市は災害時の炊き出しに活用できると考え、市内のキッチンカーレンタル、販売業者「エースケータリング」と被災地域に派遣する協定を結んだ。さらに市の補助事業として同社のキッチンカー1台を市内事業者に安価にレンタルし、運営のノウハウを伝授してもらう取り組みも実施している。
同市の担当者は「コロナが終息すれば、イベントなどに、どんどんキッチンカーを借り出してもらいたい」と期待を高めている。
府内自治体 キッチンカー活用広がる - 読売新聞
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