このところ街角でみかける機会が増えたキッチンカー。新規参入以外にも、新型コロナウイルス禍で売り上げの減少した飲食業者がテークアウト料理などを販売する有力な手段ともなっているようだ。もともと車のカスタマイズを手がけている愛媛県松前(まさき)町の自動車会社「FEAST(フィースト)」にもキッチンカーを製作してほしいという注文が相次ぎ、昨年の夏以降は例年の倍の受注があったという。
東日本大震災で注目同社は5月で創業30年。得意とするのはオーディオ、エンジンパワー、サスペンションといった車のカスタマイズだ。「フェラーリを修理している横で軽四の車検をしている。それがうちの会社です」と同社会長の平岡清樹さん(54)。車を移動手段とだけ捉えるのではなく「楽しみに変えられるための手助けをしている」のだという。根っからの車好きで、自動車関連会社に勤務し、レーサーとしても活動した後、同社を創業した。
以前からキッチンカーを手がけてはいたが、決して多くはなかった。平岡さんが状況が変わったと感じたのは平成23年の東日本大震災。多くの人が被災地に駆け付け、キッチンカーで炊き出しをする様子が紹介されたことで、注目度が上がったとみている。「うちでメンテナンスをしたお客さんにもキッチンカーで被災地へ行った人がいた」。キッチンカーが災害時に役立ち、社会貢献につながることを認識したという。
コロナ禍で受注が急増その後キッチンカーは、セカンドビジネスとして新規参入する人も増えてきた。愛媛でも、松山市内の城山公園堀之内地区で平成30年9月から、月曜日を除く毎日、キッチンカーが出る「堀之内マルシェ」を展開。公園を訪れる市民らが利用する姿が見られた。
そうした中で訪れたコロナ禍。外出自粛や飲食店への休業要請などで、キッチンカーへの注目はさらに高まった。松山市では飲食業界支援の一環として昨年、市役所前のスペースで期間限定で、キッチンカーによる販売を許可したりした。
こうした状況に、同社では昨年夏以降、例年1年間で受注する約2倍にあたる15台の注文があったという。
個性あふれる車たち平岡さんによると、キッチンカーは軽トラックにキッチンを積むタイプがお勧め。理由は維持費が安く、手放すときも高値がつくから。同社では車の購入費も含めて1台180万~280万円ほどでキッチンカーを製作。希望者の予算に合わせて、中古車を購入して作ることもあるという。
「これからキッチンカーを始めようと思う人が、イベントなどで集まった出店者にいろいろ尋ね、私の会社に来てくれたりする。それで人が結びつく」(平岡さん)。そうした人のつながりが生きたのが、平成30年の西日本豪雨だった。平岡さんが支援を求めると、キッチンカーを手がけている人らのネットワークで、救援物資が同社のショールームの床いっぱいに集まったという。
「キッチンカーには個性があります。その思いをくみ取れる車屋でありたい」という平岡さん。「シトロエンの古い車でクレープを出したり、焼きそばやアイスクリームを売ったりするのもいいですね」
(村上栄一)
コロナ禍で注文殺到 元レーサーが作るキッチンカー - 産経ニュース
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