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Thursday, August 11, 2022

ウクライナ女性、キッチンカーで広める母国の味 長野で避難生活中、異国で“自立”目指し - スポニチアネックス Sponichi Annex

キッチンカーでウクライナ料理の販売を始めた長野県高森町に避難したウクライナ女性たち

 ロシアの侵攻を受け、長野県高森町に避難してきたウクライナの女性たちが、今月からキッチンカーによるウクライナ料理の販売を始めた。食を通じた交流と仕事づくりが目的。これまで来日した避難民は1700人超。異国での暮らしが長引く中、生活費の確保が課題になっており、各地で自立に向けた取り組みが広がっている。

 長野県豊丘村にある道の駅「南信州とよおかマルシェ」。ウクライナ国花のひまわりが飾られたキッチンカーで、4人の女性が祖国の味を販売していた。「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」。購入者に声をかけられると笑顔で対応し、覚えた日本語で接客した。

 メニューは、野菜などを煮込んだ伝統のスープ「ボルシチ」と肉や卵などが入った揚げパン「ピロシキ」のセット(コーヒー付きで税込み1000円)。ボルシチは夏に食べやすいよう特別に冷やす工夫をした。

 4人は「空手道禅道会」(本部・同県飯田市)の支援で日本に避難してきた門下生の母親たち。4月末に子供を含む4世帯9人で避難し、高森町の町営住宅で暮らしている。これまで禅道会に集まった寄付金や高森町のサポートで生活してきたが、今後の生活費をどうやって確保していくかが課題となっていた。

 今回の取り組みは禅道会の小沢隆首席師範(61)やキッチンカー事業者の協力を得て実現。今月1日から販売が始まり、1日100食限定ながら、開店から10分足らずで売り切れることもあるという。8月中の期間限定で、16、18、19、21日には松本市で開催中の食の祭典「松本サマーフェスト」にも出店を予定している。

 パリツカ・ユリヤさん(35)は「言葉が通じないことや日本の人たちのような高い基準のサービスができるのか心配だった。でもこうして仕事できることがうれしい」と笑顔。「英語ができるお客さんに温かい声をかけていただいたり、ボランティアの支援をいただいてうまくいった。これから、このような仕事でも別の仕事でもできるような気がします」と手応えを口にした。

 小沢氏は「まず期間限定の取り組みだが、キッチンカーの継続やレトルト販売なども個人的には考えている」と展望を語る。避難民の中で最年少のスタシュク・ダニエラちゃん(4)の名前を冠したクラウドファンディング「ダニエラ基金」を立ち上げており、集まった寄付を避難民の仕事創出やウクライナ本国への継続的支援のために充てる考えを示した。小沢氏は「長引く戦火で避難は長期化している。一般的な寄付金に頼るのは限界で、中長期的な支援の形をつくりたい」と話した。

 《自治体や「ドンキ」がサポート》滋賀県彦根市では、避難しているウクライナ人女性やその家族らが同市でキッチンカーで家庭料理の販売を7月に開始。今月8日から東京・丸の内で2台目を出店するなど事業を広げている。運営会社が避難民を積極的に受け入れてきた大手ディスカウントショップ「ドン・キホーテ」では23人が現在、各地の店舗や事務所などで働いている。

 《国外への避難民1000万人超に》高森町に避難した9人の故郷はウクライナ中部ビンニツァ。7月14日には商業施設などがロシア軍の巡航ミサイルによる攻撃を受けて20人以上が死亡した。関係者によると、ダニエラちゃんの友人だった女児(4)も攻撃で犠牲になった。ロシアによる侵攻は半年近く続いており、休戦の兆しは見えていない。ロシアは東部ドネツク州の全面占領を目指し攻撃を続けている。一方、米英からの武器供与を受けるウクライナ軍は南部奪還を目指し、ヘルソン州で反撃を強めている。国外への避難民は1000万人を超えた。

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