時間単位で利用できるキッチン付きのレンタルスペースが人気を集めている。「ウィズコロナ」を機に不特定の人と接することなく、親しい人と飲食が楽しめる場としてニーズが高まったためだ。一緒に調理もでき、周囲に気兼ねなく、ゆったり過ごせるのが魅力のようだ。（島香奈恵）
大阪ガスが運営する食と住まいの情報発信拠点「ハグミュージアム」（大阪市西区）内のキッチン付きレンタルスペース「リラクック」は広さ８０平方メートル。８人がけのテーブルやソファを設置し、調理器具や食器、調味料を備える。備え付けのタブレットで有名シェフのオリジナルレシピの動画も視聴できる。利用料は６時間３０００円。昨年６月のオープン以来、若者や子育て層など幅広い世代に人気で、土日の予約はほぼ埋まっている。
スポーツジムの仲間３人で利用した大阪市内の女性（６８）は「料理好きのみんなで、新たなレシピにチャレンジしようと思った。個室なので自由に過ごせるのもいい」とくつろいでいた。
同拠点の広報・運営グループチーフ阿部信之さんは「自宅とは違う非日常空間で、料理やリラックスした時間を楽しんでもらいたい」と狙いを話す。
コロナ禍では感染拡大を防ぐため、飲食店で人数制限などの規制が講じられた。その後、コロナと社会活動の共存をはかる「ウィズコロナ」に移行すると、不特定の人が集まる店でも家でもないレンタルスペースが、私的な集まりの場の選択肢として注目されるようになった。
同市西区の不動産会社「住まい壱番館」所長の柳井正彦さんは「コロナ禍を転機にレンタルスペースが身近な存在になった。特にキッチン付きはリビング感覚で使えるので人気がある」と話す。
同社も２０２２年８月、同市大正区の３階建てビルにレンタルスペース「キッチンスタジアム」を開いた。キッチンやテーブル、壁紙などの雰囲気が異なる６室（各約２０平方メートル）があり、予約サイトを通じて支払いをすれば鍵の暗証番号が伝えられ、人を介さず利用できる。利用は２時間からで、料金は平日で１時間１６００円程度。「地域住民が集う公民館的な役割も果たしている」と柳井さんは語る。
飲食店跡を生かした例も。神戸電鉄・谷上駅ビル内で昨年６月に開設した「谷上駅前スペース」は広さ約１１０平方メートルの元ハンバーガー店で、１時間３３００円。
レンタルスペースの利用者と貸主を仲介するサイト「インスタベース」を運営する「Ｒｅｂａｓｅ（リベース）」（東京）によると、掲載件数は３万件を超え、２０年の約４倍に増加した。昨年３月期の利用総額は３８億円と２０年同月期の３倍以上に伸び、今期も前年を上回る見込みという。キッチン付きも年々増え、３５００件余りが紹介されている。
広報担当の竹山枝理香さんは「キッチン付き以外にサウナやシアタールーム、音楽スタジオを備えた場所など、用途に応じて多様化している。今後もさらに使い方の幅が広がり、利用者は増えるのではないか」と話している。
土日の予約ほぼ埋まる、時間単位でレンタル「キッチン付き個室」が人気…サウナ・シアタールームなども - 読売新聞オンライン
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