2019年7月、北九州市の中心市街地に、公園でも道路でもないオープンスペース「船場広場」がオープンした。市が民間企業から無償で私有地を借り、運営を商工会議所に包括委任、まちづくり会社が活用に取り組む。コロナ禍を経てオープンスペースへの注目が高まる中、多くのキッチンカーが出店、新たな賑わいを生み始めている。
「船場広場」は、北九州市内唯一の百貨店「井筒屋」と向かい合う位置にある。前面道路に当たる通称「クロスロード」は国家戦略特別区域の指定を受けて国家戦略道路占用事業を実施しており、これまでもマルシェなどのイベントが開催されてきた。市の商業地の心臓部ともいえる立地だ。なぜここに“広場”ができたのか。
市長自ら所有者と談判、廃ホテル解体にこぎつける
この場所には長く、廃業したホテルの建物がそのまま残されていた。1962年に建てられたもので、ホテルは2001年に廃業、わずかに残ったテナントも07年に撤退した。一時はマンション開発も検討されたが実現せず、10年以上も空き家の状態が続く。立地が立地だけに北九州市もこれを問題視し、16年2月には北橋健治市長が自ら商工会議所会頭とともに所有者である住友不動産本社を訪問し、再開発について直談判した。
17年9月、市は住友不動産との合意にこぎつけ、基本協定を締結する。内容は、市が建物を解体し、土地の一部にあたる約800m2を無償で借り受けるというものだ。解体費用は借地割合で案分し、総額4億2500万円のうち市が1億2300万円を負担した。さらに市は借地部分に4900万円を投じ、電源や給排水、照明を備えた広場を整備した。
広場がオープンした19年7月の会見で北橋市長は「ようやく氷が溶け始めて、まちに再活性化、再開発の流れが始まっていく予感がする」と述べ、広場を「新たな賑わいづくりの拠点の1つ」にするとした。運営管理は北九州商工会議所に包括委任し、SDGsのゴール11番目「住み続けられるまちづくり」と、17番目「パートナーシップで目標を達成しよう」の2つを目指す取り組みだと語っている。
北九州市・上田玄志郎氏(写真:萩原詩子)
広場の利用規約には、基本コンセプトとして、①普段の暮らしの中にある「憩い」の広場、②都心の「にぎわい」を創出する広場、③常に「チャレンジ」し続ける広場の3つを掲げている。
借地期間は10年を目安としているが「必ずしもこれに縛られない」と北九州市建築都市局都市再生推進部都市再生企画課の上田玄志郎事業調整係長は説明する。「所有者が開発に着手してくれれば、市としてもそれに越したことはない。その際は契約を終了して返すことになっている」。広場の舗装は撤去が容易なインターロッキングとし、建物の建設や植樹は行わない。
北九州市「船場広場」、コロナ以降キッチンカーで新展開 - 新公民連携最前線
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