栃木県足利市と群馬県太田市で五店舗を展開する創業七十五年の老舗食品スーパー「キッチンストアー」(本店・足利市伊勢町)が二十四日、全店で営業を停止した。家庭的な店舗運営で長年、地域の食を担ってきたが、事前告知のない突然の閉店。徒歩や自転車で訪れる高齢の常連客も多く、地域に与える衝撃は大きい。閉店を知らずに訪れた客が閉じたシャッター前で立ち尽くす姿も見られた。(梅村武史)
閉店したのは足利市内の本店、新山店、宮北店、五十部店と群馬県太田市飯塚町の飯塚店。各店のシャッターに社長名の「営業停止のお知らせ」が張り出された。閉店理由を「諸般の事情」とし、「万策尽きて苦渋の選択」「長年のご愛顧を心から感謝」などとつづっている。
複数の関係者によると、同社の負債総額は推定で七億円前後。同業者との競争激化に加え、仕入れ値の上昇、販売不振などが主因でコロナ禍も痛手だった。今後の手続きを担当する中央法律事務所の弁護士は「準備が整い次第、宇都宮地方裁判所足利支部に破産申し立てを行う」と説明した。
常連客という七十五歳の主婦は閉店の張り紙にじっと見入っていた。「ほぼ毎日利用していたので本当にびっくり。生鮮食品が新鮮で毎週土曜日のセールを楽しみにしていたのに」。八十代の男性は「地域密着型で雰囲気が好きだった。結局、大手スーパーとの競争に勝てなかったのかな」と残念そうに語った。
同社は、終戦直後の一九四七年、足利市内に家族経営の青果店として創業し、六一年に法人化。七五年に社名を現在の「キッチンストアー」に改めた。地元市場から積極的に仕入れる地産地消推進店で青果、鮮魚、精肉の鮮度にこだわった。足利花火のスポンサーを長年続けるなど地域貢献にも積極的だった。
同市の早川尚秀市長は定例記者会見で「地域の食生活を支えた歴史あるスーパーだけに残念で寂しい。買い物に困る人が出てくることも想定されるので実情の把握に努め、移動販売車などの対応なども検討したい」と話した。
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