シェアキッチンでパンを焼く松坂さん（右）ら＝名古屋市瑞穂区春敲町２のみんなのキッチン・オイシーチョイスで
コロナ禍で飲食業界が打撃を受ける中、複数の事業者が共同利用する「シェアキッチン」に注目が集まっている。今春開業した「みんなのキッチン・オイシーチョイス」（名古屋市瑞穂区春敲町二）は東海三県では初めて、テイクアウトや宅配、店内飲食、無人販売の四つの方法で営業できる設備を完備。初期投資を抑えられるため、業界に飛び込んだばかりの経営者から好評となっている。
みんなのキッチンは、揚げ物ができるフライヤーと幅広い加熱調理が可能なオーブンのある二つのキッチンを備える。出店者は朝、昼、夜、深夜の四つの時間帯と、平日と週末の営業日を選択。一日の中でも複数の出店者が入れ替わる方式で、現在は二店舗が営業している。
運営するのは、海外誘客の事業などを手がける「ＡＩＥＪａｐａｎ」（中村区）。コロナ禍の先行きが見えない中、飲食店の開業には厨房（ちゅうぼう）機器や物件など多額の費用が必要になるため、ためらう人も少なくないという。シェアキッチンは基本的に使用料だけで営業できるため、飲食店を初めて経営する人でも開業しやすく、同社は集客方法なども含めて支援している。
店内には飲食スペースもあるが、テイクアウトや宅配にも対応。常温と冷蔵の棚を備えた二十四時間営業の無人販売スペースにはカメラも備え付けられており、出店者が客層や販売状況を確かめられる。日高充代表（５３）は「人生をかけて飲食店を開くリスクは大きい。初期投資を抑えて気軽に開業できるチャンスをつくり、新たに店を始める人を後押ししたい」と話す。
三月のオープンと同時に出店したパン店「ハッピー♡パン」は週三日、小麦を使わないグルテンフリーの食パンを販売する。店長の松坂仁美さん（４３）は昨年まで介護士として働いており、店の経営は初めて。「自分で店を持つにはお金がかかり、不安は大きい。お試しの気持ちでチャレンジして、今後は自分の店を持てるように頑張っていきたい」と意気込んでいる。
地域活性化にも一役買おうと、隣接する愛知みずほ大瑞穂高校の美術部に、店舗の壁を創作活動の場として提供。部員たちは九月の文化祭の作品展示として、桜の名所で知られる山崎川に風船が揺らぐ風景をペンキで描いた。三年の鬼頭友菜部長（１７）は「高校生が写真を撮ってにぎわうスポットになってほしい」と期待した。
（坂本圭佑）
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