「2019年頃、フィンランドを旅する機会があったんです。この連載の最初の回でも少しお話しましたが、その時、以前からずっと行ってみたかったヘルシンキのアアルトの自邸を訪れたんです」
アルヴァとアイノ・アアルト夫妻が、自らの設計で1936年に完成させた自邸。ヘルシンキ郊外の豊かな自然を取り込んだモダンな建築には、設計者としてだけではなく、生活者としての視点を感じさせる丁寧なディテールが組み込まれていた。
「彼らがいかに暮らしを研究していたのかがよく分かって、感動しました。特に驚いたのは、機能的なキッチンの造作。配膳や調理、あと片付けがしやすいように、細部まで工夫がなされていました」
たとえば、キッチンカウンターの上に造作された吊り戸には、洗い物をそのまま収納できるよう、底板にはパンチングメタルやルーバー状の水切りが用意されていた。「乾燥と収納が同時にできるなんて、毎日料理をする人でないと思いつかないのではないでしょうか」と黒田さん。
また、アアルト邸のキッチンとダイニングルームの間に設けた造作の食器棚には、両側に開閉できる引き戸がついていて、白い突板に丸い取っ手の引き戸を開けると、美味しい料理がそこに現れる。配膳の同棲を効率的にしながらも、食事の楽しみが増すような仕掛けでもある。
<写真>黒田さんが訪れたアアルト邸のダイニングキッチン。造り付けのカップボードは、引き戸を介して、キッチンと繋がる。
【連載】スタイリスト黒田美津子の「さかさま」からの家づくり:綿密なディテールの造作キッチン - ELLE JAPAN
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